大きな看板に「とび出し」とだけ書かれている。左下には何やら落書きのような図像も。
ペンキ塗料の赤色は、どうも時間とともに退色がひどく、最後は消えて文字も絵もなくなってしまうようだ。消えるのは良いが、下手すると当初の目的の逆の意味になったり、まるで異なる内容になってしまう例も少なくない。
わが路上観察隊は、むしろそうした例を鑑賞して、くすくすと楽しむことを目的としている。かなりネクラで陰湿な団体でもある。
この看板も「気をつけよう、自転車の――」が消えてしまったのだろう。壊れた自転車にも赤で血の跡などが書かれていたのかもしれない。
(つづく)
(三田村 善衛)